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建設工事騒音の伝搬経路対策として最も多く用いられているのは防音シートです。
防音シート等の遮蔽物による騒音の低減量は、遮蔽物の高さ及び長さ(回折減衰)と遮蔽物の遮音性能(音響透過損失)によって決まります。
音響透過損失とは建築材料単体の遮音性能を示すものです。
受音点における騒音の大きさは、遮蔽物を回り込んで伝わる回折音と遮蔽物を透過する透過音の合成音で表されます。防音シート等による騒音低減効果のイメージは図-1に示すとおりです。
回折には正面の回折と側面の回折があります。

図-1 防音シート等による騒音低減効果のイメージ
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上述したとおり防音シート等による騒音低減量は遮蔽物の高さ及び長さ(回折減衰)と遮音性能(音響透過損失)で決まります。ただ、現在建設工事の騒音予測で主に用いられている日本音響学会提案のASJ CN-Model 2007ではこの全ての項目(鉛直方向[高さ]及び水平方向[長さ]の回折減衰、音響透過損失)は予測できません。
このうち表-1に示すとおり側面(水平方向)の回折減衰は予測できないため、側面の回折減衰が考慮できるようなASJ CN-Model 2007の改良モデル(以下、最新予測モデルという)の作成を行いました。
表-1 建設工事騒音の予測モデルASJ CN-Model 2007の課題
| 予測モデル | 予測可能な内容 | ||
| 回折減衰 | 音響透過損失 | ||
| 側面端部の回折 (水平方向) |
正面端部の回折 (鉛直方向) |
||
| ASJ CN-Model 2007 | × | ◯ | ◯ |
| 最新予測モデル(CN-Model + RTN-Model) | ◯ | ◯ | ◯ |
建設工事騒音の予測モデルASJ CN-Model は最新のモデルが2007年であり、その後20年近く更新されていませんが、道路交通騒音の予測モデルASJ RTN-Modelは5年毎に改定されており最新のモデルが2023年であり最新の研究成果が反映されています。
ASJ RTN-Modelの論文にはASJ CN-Modelの論文には記載されていない側面(水平方向)の回折減衰の検討手法が記載されているため、この検討手法に基づいてASJ CN-Model 2007の改良を行いました。
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防音シートの側面の回折減衰を考慮した場合に水平方向(平面)及び鉛直方向(断面)の予測結果がどの程度変化するか確認するためにASJ CN-Model 2007及び最新予測モデルによる予測を行いました。
(1)予測平面及び予測断面の設定
予測を行った平面及び断面は図-2に示すとおりであり、予測平面は図の範囲全体、予測断面は防音シートの中央を通る予測断面1と防音シートの端部の外側を通る断面2を設定しました。

図-2 予測平面及び予測断面
(2)平面予測結果(水平方向の回折減衰の変化の把握)
ASJ CN-Model 2007及び最新予測モデルの特徴の比較は表-2、ASJ CN-Model 2007及び最新予測モデルによる平面予測結果は図-3に示すとおりです。
表-2 ASJ CN-Model 2007及び最新予測モデルの特徴の比較
| ASJ CN-Model 2007による予測結果 | 最新予測モデルによる予測結果 |
| ・防音シートの側面端部で急に回折が生じる ・音源-受音点を結ぶ直線と防音シートが交差する位置がどこであっても回折減衰量は一律である ・回折減衰が生じる範囲が最新予測モデルに比較して狭い |
・防音シートの側面端部周辺で徐々に回折が生じる ・音源-受音点を結ぶ直線と防音シートが交差する位置によって回折減衰量が異なる。 ・回折減衰が生じる範囲がASJ CN-Model 2007に比較して広い |

図-3 ASJ CN-Model 2007及び最新予測モデルによる平面予測結果
(3)断面予測結果(鉛直方向の回折減衰の変化の把握)
ASJ CN-Model 2007及び最新予測モデルによる予測結果の比較は表-3、ASJ CN-Model 2007及び最新予測モデルによる断面予測結果は図-4に示すとおりです。
表-3 ASJ CN-Model 2007及び最新予測モデルによる予測結果の比較
| 断面番号 | 予測結果の概要 |
| 断面1 | 防音シートの中央を分断する断面1の予測結果は、ASJ CN-Model 2007と最新予測モデルの違いは等音分布図ではほとんどわからない。 |
| 断面2 | 防音シートの端部のやや外側を通る断面2の予測結果は、ASJ CN-Model 2007では防音シートの影響が全くないが、最新予測モデルでは防音シートによる減衰効果が現れている。 |

図-4 ASJ CN-Model 2007及び最新予測モデルによる断面予測結果
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音響透過損失が異なる2パターン(10dB及び20dB)の予測結果の比較は、図-5に示すとおりです。
音響透過損失10dBの予測結果は音響透過損失20dBの予測結果に比べ、防音シートを透過する音が多いため防音シートの中央部から音が外側に張り出す形状のコンターとなっています。

図-5 音響透過損失が異なる2パターンの予測結果の比較
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最新の予測モデルを用いることにより、実際の騒音に近いより正確な予測が可能になります。適切な対策の検討には精度の高い正確な予測結果が必要です。 |
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最新の予測モデルでは回折減衰が生じる範囲が広くなるため、防音シートの必要サイズ等も小さくてすむ可能性が高まります。 これにより低コストの防音対策が可能となります。 |
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役所や周辺住民から防音対策の根拠を求められる場合についても納得性の高い説明資料が作成できます。 |
参考文献一覧
1)日本音響学会建設工事騒音調査研究委員会,“建設工事騒音の予測モデル“ASJ CN-Model 2007”,”音響学会誌,64,229-260 (2008)
2)日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会,“道路交通騒音の予測モデル“ASJ RTN-Model 2008”,”音響学会誌,65,179-232 (2009)
3)日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会,“道路交通騒音の予測モデル“ASJ RTN-Model 2013”,”音響学会誌,70,172-230 (2014)
4)日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会,“道路交通騒音の予測モデル“ASJ RTN-Model 2018”,”音響学会誌,75,188-250 (2019)
5)日本音響学会道路交通騒音調査研究委員会,“道路交通騒音の予測モデル“ASJ RTN-Model 2023”,”音響学会誌,80,170-234 (2024)


