Ⅰ.最大日陰(日影)発生時期等の予測の必要性 |

図Ⅰ-1 高架橋の日陰の発生状況
1.冬至日に日陰時間が最大とならない場合
高架橋・橋梁において桁下空間からの日照が確保される場合は冬至日に日陰時間が最大とならない可能性があります。
通常は構造物の直下付近が最も日陰時間が長くなりますが、冬至日の高架の場合は桁下からの日照があるために、最大日陰の発生箇所が高架橋の外側にずれるとともに、高架直下の日陰時間が最大となるのは太陽高度がより高くなる他の時期となります。

図Ⅰ-2 高架橋の日照侵害に関する裁判のポイント
2.裁判所による日照権侵害の考え方
新東名高速道路の高架橋の建設において、近隣住民が冬至を基準日とする通知※の基準を満たさないため日照阻害の補償対象から外されたこと等を契機として、施工者である中日本高速道路に損害賠償を求めた訴訟で、 名古屋高裁は、冬至日のみを基準とすることは必ずしも合理性がなく、年間を通じての日照被害状況も考慮して,受忍限度を超えるものかどうかを判断すべきと評価しました。
※通知:公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について(最近改正 平成15年7月11日国土交通省国総国調第46号)
3.日照阻害の費用負担算定の対象日を冬至日以外とした事例
一般国道487号警固屋音戸バイパス事業においては高架高さが高く、桁下空間からの日照の影響により冬至日に日陰が最大とならない建物が生じることが予想されました。
そのため、冬至日前後に現地踏査を行い、その調査結果を踏まえた予測・検討結果より、「2月中旬」に日陰影響が最大となる建物が確認されたため、費用負担算定の対象日として「冬至」に加え「2月中旬」を追加し、費用負担の算定が行われました。
Ⅱ. 最大日陰(日影)時間の発生時期及び発生位置の予測例 |
1.予測条件 予測日数:12/21~3/20 ([冬至から春分]90日間) 予測時間帯:8時から16時(真太陽時) 予測場所:宮城県仙台市 高架道路の高さ:13~17m 道路幅員:約10m 平面図の予測高さ:地上1.5m |
2.予測結果 1日の日陰時間が4時間を超える最大日陰時間の発生時期及び発生位置の予測結果は平面のは図Ⅱ-1、横断は図Ⅱ-2に示すとおりです。 最大日陰時間の発生時期及び発生位置は、高架道路からみて最も外側が12月下旬(冬至頃)で、最も内側が3月1日以降となっており、道路に沿って帯状に発生時期が変化しています。 |

図Ⅱ-1 最大日陰時間の発生時期及び位置平面図

図Ⅱ-2 最大日陰時間の発生時期及び位置横断図
Ⅲ.住民理解を得るための高架橋における日照阻害の調査・予測の留意点 |
・高架橋の日照阻害においては、冬至日のみを対象とした調査や予測では実際の年間を通した日陰の発生状況とは大きなズレが生じる可能性があります。 ・高架橋が東西方向でかつ高さのある場合は最大日陰時間の発生時期が冬至頃となる範囲はわずかです。 ・最大日陰時間の発生時期及びその位置は数m単位で変化するため、費用負担の調査においては事前に予測を行ってから調査時期と調査家屋を設定することが望ましいと考えます。 |
参考文献一覧
1)江副哲.”土木の法務解説 インフラによる日照権侵害 国の通知よりも実質的な被害で判断” .日経コンストラクション,2021年4月12日号
2)広島県西部建設事務所呉支所用地課.”高架橋の建設により生じた日照阻害(最大日陰が冬至日以外)に対する費用負担について” .用地ジャーナル,2013年11月号